News お知らせ

コラム

世界のカジノが魅せる芸術空間

「カジノ」と聞いて思い浮かぶのは、煌びやかなスロットマシンやテーブルゲーム、華やかな人々の喧騒かもしれません。
しかし、世界の有名カジノに一歩足を踏み入れてみると、そこには“ギャンブルの場”という枠を超えた、驚くほど洗練された空間が広がっています。
 
実はカジノの多くは、建築そのものが芸術作品のように設計されています。
その意匠やスケール感、コンセプトの作り込みは、美術館や劇場にも引けを取りません。
今回は、そんな「建築芸術としてのカジノ」に注目し、世界各地の代表的な建築を通してその魅力を紐解いていきます。
 

カジノは“テーマパーク”から“建築芸術”へ

カジノの起源はヨーロッパにあり、もともとはフランスで上流階級向け、あるいは庶民向けの賭博場として発展していったと言われています。
やがてその文化はアメリカへと渡り、1960年代以降のラスベガスで大きな変化を遂げました。
 
この時代に登場したのが、装飾や豪華なテーマ性を備えた「テーマカジノ」です。
単なるギャンブル施設ではなく、ショッピングモールやホテル、劇場、プール、レストランなどが一体となった複合型リゾート施設として発展。
それにともない、建物そのもののデザインや演出も、よりドラマチックで芸術的なものへと進化していきました。
 
現在では、こうしたエンターテインメント性の高いカジノ建築は世界中に存在し、観光や非日常体験を求めて多くの人々を魅了しています。
本記事では、その中でも「一度は訪れてみたい」と思わせる芸術的なカジノ建築を、厳選してご紹介していきます。
 

代表的な芸術的カジノ建築

◾ベラージオ(ラスベガス)
 
ラスベガスの中心部に位置するベラージオは、イタリア・コモ湖の風景を再現したエレガントな建築美で知られています。
外観はクラシカルで上品、前面には美しい人工湖が広がり、有名な噴水ショーと一体になった景観はまさに芸術。
 
内部にも見どころが満載で、特に注目したいのがロビーの天井を彩るガラスアート『Fiori di Como』
虹色の花々が咲き誇るこの作品は、2,000個以上のベネチアン・ガラスから構成されており、アメリカを代表するガラス芸術家デイル・チフリー(Dale Chihuly)によって制作されました。
 
チフリーは1992年にアメリカで初めて「人間国宝」に選ばれたガラス作家であり、光と色彩を操るその手腕は世界中で高く評価されています。
 
彼の代表作ともいえる『Fiori di Como』は、まさにベラージオの顔。
建築とアートの融合を象徴する存在として、多くの訪問者を魅了し続けています。
 
◾グランド・リスボア(マカオ)
 
ひと目見ただけで記憶に残る、金色の“蓮の花”を模したフォルム。
マカオ中心部にそびえるこのホテル&カジノは、マカオで最も高い建築物として知られています。
設計を手がけたのは、香港の建築家デニス・ラウ(劉榮廣)とン・チュン・マン(伍振民)。
彼らによる大胆なデザインは、東洋の象徴である蓮の花をモチーフにし、現代建築の中に伝統と象徴性を融合させた傑作といえるでしょう。
 
建物の外壁には6万個のLEDライトが取り付けられており、夜になると色鮮やかな光がきらめき、マカオの夜景を一層ドラマチックに演出しています。
その独特な外観と圧倒的な存在感から、グランド・リスボアは今やマカオを代表するトレードマークのひとつとなっています。
 
内部もまた幻想的な雰囲気に包まれ、豪華絢爛なインテリアと共に、建築全体がまるで巨大なアート作品のような魅力を放っています。
 
◾モンテカルロ・カジノ(モナコ)
 
クラシックな美を求めるなら、やはりモンテカルロ。
「カジノ・ド・モンテカルロ」は、1863年に開業したモナコ最古のカジノであり、その建物はパリのオペラ座を設計したことで知られる建築家シャルル・ガルニエによって手がけられました。
 
その宮殿のように荘厳で華麗な佇まいは、モナコの建築物の中でもひときわ優雅で、まさにベル・エポック様式を象徴する存在です。
外観はもちろん、内部の装飾やホールも圧倒的な美しさを誇り、貴族文化の名残を現代に伝える芸術建築として高い評価を受けています。
 
まるで映画のワンシーンに迷い込んだような空間で、優雅な時間を過ごすことができるのも、モンテカルロならではの特別な体験です。
 

建築×心理:空間の使い方もアートの一部

カジノ建築のすごさは、見た目の美しさだけではありません。
実はその内部空間は、人間の心理に作用するよう、綿密に設計された“仕掛け”に満ちているのです。
 
たとえば、天井を低くすることで落ち着きや集中を促す、時計や窓を排除して時間感覚を忘れさせるといった設計は、すでに多くのカジノで取り入れられています。
さらに、通路は直線ではなく曲線にすることで、プレイヤーが自然と施設の奥へ奥へと進むよう誘導されるなど、無意識の行動に影響を与える工夫も施されています。
 
また、明るい照明、ゴージャスな装飾、独特の音響効果といった演出も重要な要素です。
これらは、プレイヤーの感情に働きかけて興奮を高めたり、リラックスさせたりする効果があり、非日常的な没入感を生み出します。
その結果、訪れた人々は「気づけば何時間も滞在していた」というような体験を自然と受け入れてしまうのです。
 
このように、カジノ建築とは単なるデザインではなく、心理的にプレイヤーを惹きつける“空間演出の芸術”でもあるのです。

まとめ

カジノはギャンブルを楽しむ場所であると同時に、空間そのものが観賞に値する芸術作品です。
建築という視点で見直してみると、そこには見逃していた多くの美が隠れていることに気づきます。
 
次にカジノを訪れるときは、勝敗だけでなく「空間を味わう」視点もぜひ取り入れてみてください。
きっと、より豊かな体験が待っているはずです。
TOP